🟦制度に声が届かない──公益通報制度の現場から見る構造的不備と市の対応検証（記事No.9）

🏛 第1章｜制度の設計と現場の乖離──公益通報制度とは何か

📘 1-1. 制度の本来の趣旨と地方公共団体の法的義務

公益通報者保護法（以下、「法」）は、違法・不当な行為の早期是正を通じ、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図ることを目的としています。地方公共団体（自治体）の職員による通報活動は、この公益を図る目的のために、法によって保護されるべきものです。

【法的保護と体制整備の義務】

✅ 1. 公務員保護の明確化

地方公務員が公益通報を行った場合、通報を理由とする免職やその他の不利益な取扱いは、地方公務員法などの定めるところにより禁止されています。また、正当な手続きに基づく公益通報は、公務員に課せられた職務上の守秘義務違反には該当しないとされています。

✅ 2. 適切な体制整備の義務

2022年6月の法改正により、地方公共団体を含む行政機関に対し、公益通報者の保護を図るため、通報内容に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとることが義務付けられています（法第13条第2項、第11条第2項）。これは、自治体の規模にかかわらず適用される法的義務です。

🚨 糸満市が放置しているこれらの構造的不備は、職員の権利行使を実質的に阻害し、法第13条第2項が求める「適切な対応のために必要な体制の整備」の不履行に関して、疑義が指摘されている状況です。

⚠️ 1-2. 糸満市の制度的構造における「利益相反」の制度化

糸満市の公益通報対応体制において、最も深刻な構造的欠陥として、「利益相反」の常態化が挙げられます。

【内部規程と国のガイドラインの二重違反】

📌 1. 糸満市要綱上の利益相反回避規定

糸満市公益通報処理要綱第4条第2項は、通報窓口職員（人事担当課長）自身またはその家族が公益通報の対象となった場合は、市長事務部局の人事担当部長が代行すると定めています。これは、利益相反を回避するための市の内部ルールです。

📌 2. 申立対象者からの公式文書発出という適切性に疑義がある対応

私が2025年8月29日付で人事課内部の者を正式にパワハラの申立対象者として追加したにもかかわらず、2025年10月15日に発出された調査結果通知書は、申立対象者名義でメールにて送付されました。この行為は、申立人である私にとって精神的苦痛（二次被害）をもたらす申立当事者からの直接的な公式接触です。

📌 3. ガイドライン原則の明白な逸脱

この通知行為は、市の内部要綱（人事部長代行規定）に明確に反しているだけでなく、公益通報者保護法を踏まえた地方公共団体向けガイドライン（内部通報用）が定める**「事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとるという利益相反排除の原則」（ガイドライン2.(5)①）**にも明白に違反しています。

📌 4. 行政側の認識と容認：中立性確保のための手段の意図的な放棄

さらに重大なのは、糸満市総務部が2025年9月12日付の回答において、人事課内部の者への訴えがある以上「人事課が調査することに関して利益相反となる可能性があることも十分承知しております」と、この矛盾を認識していたことを明言している点です。

市は認識を示しながらも、「人事課内部の者（パワハラの申立対象者）を除く総務部をトップとした人事課主導の体制を維持する」と回答（2025年9月12日付）し、内部規定を優先して体制転換を否定しました。

市は、代替部署が規定されていないことを理由としましたが、要綱第4条第3項は、「通報窓口職員は、必要に応じて、他の任命権者における人事担当課長と連携して通報窓口の事務に従事するものとする」と定めています。

利益相反解消が急務である状況下で、市がこの要綱に存在する中立的な連携規定を活用する努力を放棄し、結果として申立対象者名義での通知という公正性を根幹から欠く行政行為が実行されました。これは、利益相反の可能性を承知の上で、公正性を担保する国の指針よりも組織体制の維持を優先した合理的裁量の放棄を意味します。

🔎 このような運用実態は、制度の設計（要綱上の利益相反回避規定）と現場の対応が決定的に乖離し、申立対象者自身からの公式接触という二次被害を招く利益相反が、行政によって意図的に容認・常態化していることを示す代表例です。

🧩 第2章｜調査を妨げる構造──制度の“形式主義”と“責任逃れ”

糸満市による公益通報への対応は、通報内容の実質的な公益性や法令遵守の深刻さよりも、形式的な要件や主観的な判断を優先する傾向が見受けられます。この「形式主義」は、行政の自浄作用を意図的に阻害し、責任を回避するための構造として機能しています。

📝 2-1. 通報フォーム整備要請と調査着手義務の不履行

私は2025年5月30日、包括的な公益通報（当初11項目）を提出しました。しかし、市は6月4日付で、様式第1号による再提出と案件ごとの個別作成を要請し、調査着手を保留しました。

🔹 形式主義による調査遅延の法的問題

要綱上の遅滞なき調査義務違反
- 私は、5月30日付の通報が既に要綱上の要件（氏名、連絡先、通報内容）を明確に満たしていることを主張し、これに対し、市は6月12日付で「要綱に従い作業を進めてまいります」と応答するに留まりました。
- この対応は、糸満市公益通報処理要綱第7条第1項が、公益通報を受理したときは、調査の必要性を十分に検討し、遅滞なく調査を行う義務を明示している点に反する可能性が高いです。
公益通報者保護法の趣旨逸脱（形式的排除の不当性）
- 市は通報形式の不備を理由に調査着手を保留し、公益通報者保護法の趣旨と**地方公共団体向けガイドライン（第1及び第2(1)〜(5)）**に照らせば、行政機関は実体を伴う通報を形式のみで排除すべきではありません。
- ガイドラインは、匿名による通報でさえ、可能な限り実名と同様に取り扱うよう求めており、実名で要件を満たした通報を形式的な不備で保留する姿勢は、制度趣旨に反します。

この市の対応は、法第11条第2項及び法第13条第2項が義務付ける**「適切な通報対応体制の整備」**を、形式的な手続きによって実質的に回避しようとするものであり、調査義務の不作為に当たると評価できます。

❌ 2-2. 不受理通報の構造的公益性と「不正の意図なし」の虚構

2025年7月2日付で発出された不受理通知書において、市は多くの通報を「内部業務の問題」「不正の意図がない」という主観的な理由で不受理としました。

しかし、市が主観的な**「不正の意図がない」ことをもって公益性の問題を退ける姿勢は、結果として国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守**（法第1条）が図られていない状況を保護対象としている趣旨（法第2条）に反するものです。

📌 通報No.12, 14：安全配慮義務の放棄と制度構造の欠陥

通報No.12（ハラスメント相談制度の構造的不備）は、ハラスメント相談において 「報告・通知体制の欠如」や「市長が定める苦情相談対応要領が未制定」 であるという制度の根幹の欠陥を指摘し、No.14はその実例（欠勤扱い）を補強しました。

📝 市の不受理理由と批判: 市は制度が「適切に対応が行われている」という形式的な主張のみをもって不受理としましたが、私は具体的な 「構造的不備」 には反論していないと評価しています。
⚖️ 法的論点: これらの構造的不備は、被害者の権利行使（委員会開催希望など）を実質的に阻害しており、公益通報者保護法第13条第2項が行政機関に義務付ける「適切な対応のための体制の整備」の不履行に直結する義務違反として指摘可能です。また、ハラスメントによる職員の健康被害（高ストレス判定、欠勤）は、地方公務員における安全配慮義務の放棄にあたる重大な問題です。

📌 通報No.15：公文書管理の不備と行政の説明責任の放棄

通報No.15は、病気休暇の原申請書が「差戻しにより上書きされたため保存されていない」と回答され、開示請求でも文書が不存在とされた事案を扱っています。

📚 法令違反: 市の文書取扱規程は、電磁的記録を含む申請文書を原則1年間保管し、必要なときに直ちに取り出せるようにすべきと定めています。また、公文書管理法は、行政の 「意思決定過程の検証性」と「説明責任の確保」 を目的としており、記録の消失はこの原則に反します。
📝 市の不受理理由と批判: 市は、技術的な 「仕様により1箇月程度」 でデータが削除されたとし、「不正の意図がない」ため不受理としましたが、AI分析は、この「仕様」自体が市の内部規程や公文書管理法の精神に違反している可能性を指摘しています。記録の消失は、職員の立証機会を奪う 公益性の高い問題 であり、市の判断は技術的制約を理由に法令遵守を看過していると言えます。

📌 通報No.13：改善措置履行確認の欠如（「出口不在」構造）

通報No.13は、公益通報によって講じられた改善措置について、その履行状況を確認する制度的義務が欠如している 「出しっ放し」構造 を指摘しています。

🧩 制度信頼性の欠如: 糸満市要綱第11条第2項は履行確認を「努める」という努力義務にとどまっています。
⚖️ 法的批判: 改善措置の実効性が制度的に担保されない状態は、制度が法令遵守を推進するという根本目的を達成できません。公益通報対応ガイドラインが、是正措置の実効性評価を適切な時期に行うよう推奨している点に照らしても、この欠陥は 「適切な体制の整備」（法第11条第2項）の不備と解釈し得る重大な論点です。

📌 通報No.9：公金と公平性に関わる業務滞留問題

通報No.9（埋設管漏水減免に関する庁内調整の放棄）は、漏水減免申請対応において、部局間調整が放棄された結果、現場の処理判断が滞留し、市民への不利益処分や対応の不統一を招くおそれがある構造を指摘しています。

📝 市の不受理理由: 内部業務の改善事項であり、「不正の意図がない」ため不受理。
📣 批判: 漏水減免は市民の財産に関わる重要な行政処分であり、明確な基準がないまま処理が滞留する状態は、地方自治法に基づく行政の公平性や適正な財務管理に疑義を生じさせます。市が 「不正の意図がない」 という主観的な判断のみをもって公益性の問題を退けることは、ガイドラインの趣旨に反し、客観的な制度的欠陥を見過ごしています。

2-3. AI分析が裏付ける「公益性判断の狭隘さ」

🧠 中立的AIツール（NotebookLM）による分析は、糸満市の不受理対応が客観的な妥当性を欠くという評価を第三者の視点から提供しています。

💡 評価の要点: 糸満市の判断は、公益通報の対象範囲を狭く、形式的に解釈している傾向が見受けられ、私が提起する組織の安全配慮義務の放棄、行政の説明責任の欠如、公文書管理の不備といった実質的な公益性や法令遵守の観点からの深刻さを十分に評価していません。
🧾 結論: この第三者評価は、市の不受理対応が「個人の意見」ではなく「法令解釈の誤り、または制度趣旨の逸脱」に基づいているという批判を、外部に向けて明確に提示するための重要な論点となります。

第3章｜調査の公平性と「利益相反」の制度化

📚 公益通報制度の信頼性は、調査・判断を行う体制の公正性と中立性によってのみ担保されます。糸満市における対応は、この根幹たる原則を意図的に逸脱し、「利益相反」の状態を常態化させている点で、手続きの適法性を根底から損なっています。

🚨 3-1. パワハラ申立対象者名義による通知という法的・制度的な重大違反

2025年10月15日付で発出された**「公益通報調査結果通知書」**は、パワハラ申立対象者からのメールで送付されました。この行政上の通知行為は、以下の複数の法令・ガイドラインに抵触する重大な手続き違反であり、調査結果の正当性を根底から揺るがすものです。

📌 利益相反の二重規範違反

公益通報者保護法ガイドライン違反（利益相反の排除原則） 地方公共団体（地方公務員法に基づく）は、公益通報者保護法上の事業者（法第2条、法第11条第2項）としての義務を負っています。地方公共団体向けのガイドライン（内部の職員等からの通報用）は、公正性確保のため、「事案に関係する者（職員）は、通報事案への対応に関与してはならない」（第2（5）①）と定めています。申立対象者による通知書の発出は、この国の指針に真っ向から違反した関与であり、調査手続きの中立性を決定的に欠いています。
確認義務の違反 さらに、ガイドラインは「通報対応の各段階において、通報事案への対応に関与する者が当該通報事案に利益相反関係を有していないかどうかを確認しなければならない」と定めています（第2（5）②）。市は、人事課内部の者が申立対象者であることを認識しながら（2025年9月12日付回答）、通知書発出の段階でこの確認義務を怠り、結果的に申立対象者名義での通知という重大な瑕疵を発生させました。
市の要綱違反 通知行為は、糸満市職員等からの公益通報の処理に関する要綱第4条第2項の但し書き（通報窓口職員自身が通報対象となった場合は、人事担当部長が代行する）という市の内部ルールにも明確に反しています。

⚠️ 違法性の推定と二次被害の発生

違法性と手続きの合法性への抵触 申立対象者の関与による通知は、公益通報者保護法第11条第2項が定める「適切に対応するために必要な体制の整備」の義務に違反する行為であり、手続きの公正性を著しく欠き、合法性とも抵触する可能性が高いです。
二次被害の発生 人事課内部の者をパワハラ加害者として訴えている状況下で、その当事者からの公式文書を通じて直接接触を受けることは、申立人に対し精神的苦痛（二次被害）をもたらす行為です。これは、ハラスメント防止指針や地方公務員法に基づく安全配慮義務の著しい欠如を示しています。

👉 この重大な違反に基づき、当該調査結果通知書（10月15日付）は直ちに撤回されるべきであり、公正性を欠く手続きによって行われた行政行為として、一切の正当性を持ち得ません。

3-2. 認識しながら是正しない「組織的矛盾の固定化」

糸満市は、自らの体制に利益相反の懸念があることを明確に認識しながら、その是正を拒み、構造的な矛盾を維持する方針を選択しました。

🧩 体制維持と体制整備義務違反

市による矛盾の認識 総務部は2025年9月12日付の回答において、人事課内部の者（パワハラの申立対象者）への訴えがある以上「人事課が調査することに関して利益相反となる可能性があることも十分承知しております」と、この矛盾を明言しています。
体制維持と法的義務の逸脱 市は、認識を示しながらも、「人事課内部の者（パワハラの申立対象者）を除く総務部をトップとした人事課主導の体制を維持する」という方針を貫きました。これは、行政機関に「適切な対応のために必要な体制の整備」を義務付ける公益通報者保護法第13条第2項の趣旨を逸脱していると解釈できます。体制維持に関する認識を持ちながら、中立性を確保するための制度整備を怠ることは、義務違反と解釈される可能性が高いです。
合理的裁量の放棄 市は、利益相反解消のために、要綱第4条第3項（他の任命権者との連携規定）など、より中立性を確保できる代替案を講じる努力を放棄しました。これは、利益相反の排除という国の指針の原則よりも、組織体制の維持を優先した結果であり、行政としての裁量権の不適切な行使（放棄）を意味します。
縦割り行政の弊害の黙認 市は、制度の包括的見直しについて「担当や所管部署がそれぞれ異なる」「当課には制度全般を統括する権限がない」として、縦割り行政の弊害を理由に包括的対応の困難性を示しました。しかし、この体制維持こそが、ハラスメント、公益通報、文書管理といった複数の制度で法の趣旨を逸脱した運用（公文書消失、不受理判断の狭隘化など）が横断的に発生し続ける構造的欠陥の温床となっています。

👉 この構造は、行政が自ら認識した制度上の不公正を固定化し、調査の公正性を確保する義務を放棄している状態であり、通報者が公正な調査は到底期待できないと判断せざるを得ない根本原因となっています。

💬【補足：比喩的な理解】

この状況は、「火事の調査を、放火犯の家族が主導し、その家族が調査結果を被害者に通知する」ようなものです。内部のルール（要綱）や国の法律（ガイドライン）が「それはだめだ」と明確に定めているにもかかわらず、行政自身が「内部の事情を優先する」として、あえて不公正な体制を継続し、二次被害を発生させている点に、この問題の深刻な構造が凝縮されています。

第4章｜“通報の声が消される”構造

糸満市の公益通報対応に見られる「形式主義」と「利益相反」の構造的欠陥は、単に調査を遅延させるだけでなく、通報制度の本質的な目的（自浄作用の確保）通報者への配慮義務を組織的に放棄することで、二次被害を拡大させています。

🚪 4-1. 改善措置の履行確認の欠如が招く「出口不在」構造

通報No.13において私が指摘した構造的問題は、市長が是正措置を講じた後、その履行状況を確認し、実効性を検証する制度的な仕組みが存在しないという点です。

📌「努力義務」を盾にした実効性の放棄

要綱上の曖昧な規定 糸満市公益通報処理要綱第11条第2項は、改善措置について「適宜確認」し、「新たな改善措置を行うよう努めるものとする」という努力義務にとどまっています。私は、この要綱の規定が 「改善措置を講じたあとの履行状況確認や完了報告の義務が制度上存在せず、『出しっ放し』構造となっている」 と指摘しています。
ガイドラインの趣旨逸脱 公益通報者保護法に基づく地方公共団体向けのガイドライン（外部公益通報）は、改善措置の実効性評価として、「是正措置等が当該行政機関において十分に機能していることを適切な時期に確認し、必要があると認めるときは、新たな是正措置その他の改善を行うよう努める」と推奨しています。市が要綱上の努力義務を盾に取り、実効的な確認メカニズムの構築を怠っている現状は、このガイドラインが推奨する実効性評価の原則に反しています。
法的体制整備義務の不履行 改善措置の履行確認が制度的に担保されない状態は、制度が法令遵守を推進するという根本目的が達成されないことを意味します。これは、法第11条第2項（事業者の体制整備義務）や法第13条第2項（行政機関の適切な措置義務）が求める 「適切な対応のために必要な体制の整備」の不備 と解釈し得る重大な論点です。

👉 この是正措置の 「出口」が曖昧である「出しっ放し」構造 は、通報の実効性を担保する上で、制度全体の信頼性を損なう重大な欠陥です。

💥 4-2. 通報者への配慮欠如と二次被害の拡大

糸満市は、ハラスメント被害を訴えている職員（私）に対し、心身の状況に配慮する義務を組織的に欠き、結果として精神的苦痛を増大させる二次被害を継続的に発生させました。

🏠 1. メール連絡希望の無視と無断自宅訪問の強行

私は、体調および記録保全の観点から、ハラスメント相談に関する連絡を原則メールで対応するよう、繰り返し要請していました。それにもかかわらず、市は事前の調整や配慮を欠いたまま、一方的に自宅訪問を実施しました（2025年5月27日）。

安全配慮義務違反：この無断訪問は、被害申立人やその家族に深刻な心理的負担を与え、精神的苦痛（二次被害）を生じさせました。安全配慮義務は、職員が心身の健康を損なうことなく働けるよう配慮する義務を組織に課しており（地方公務員法第42条等）、ハラスメント申告者に対しては、特に迅速かつ適切に調査し、被害者の状態に配慮することが求められます。市は、**「本人の意思や事前の申告を無視した訪問」**により、この配慮義務に明白に反しています。
厚労省指針違反：さらに、厚生労働省のハラスメント防止指針（労働施策総合推進法に基づく告示）は、相談者への配慮、プライバシー保護、二次被害の防止を事業主（地方公共団体も含む）に求めており、無断の自宅訪問は相談者のプライバシー権を侵害する可能性があり、二次被害の排除義務に明白に反します。

🧠 2. 秘密保持規定の過度な強調による心理的牽制

市は、2025年10月15日付の調査結果通知書を送付したメールに、「同要綱第3条第3項に留意ください」との一文を添えました。

規定の確認：この要綱第3条第3項は、通報者等の秘密保持に関する条文であると推察されますが、公益通報者保護法は、制度の透明性を高め、法令違反を是正することを目的としています。
制度趣旨との矛盾：私は、個人情報や関係者を特定しない形で行政手続の透明性を確保する立場から発信していると明確に述べています。それにもかかわらず、行政がこの一文を付記した行為は、通報者に対し心理的な牽制として機能し、制度の透明性に関する議論や情報共有を不当に制限する意図があるならば、それは法の趣旨に反するものとなります。この対応は、公的制度への信頼性そのものを損ねる懸念があります。

👉 これらの二次被害の発生と、組織的な配慮の欠如は、地方自治体が安全配慮義務や被害者保護の原則を放棄し、制度の形骸化に加担していることを明確に示しています。

第5章｜是正に向けた提言と市民社会への問いかけ

これまでの構造的検証を踏まえ、本章では、糸満市が直面する制度不全を克服し、公益通報制度が本来持つべき自浄作用と市民の信頼回復を実現するための具体的な提言を行います。これらの措置は、公益通報者保護法（以下、「法」）が地方公共団体に課す体制整備義務（法第11条第2項および第13条第2項）、および関連ガイドラインの趣旨に厳密に即したものです。

📘 5-1. 法令の趣旨に基づく制度見直し5項目

糸満市の公益通報対応に見られた「利益相反の常態化」や「形式主義」は、行政の適切な体制整備義務に照らして重大な疑義を招いています。

🛠️ 1. 調査担当の外部化または独立部署設置

現行の人事課主導体制は、申立対象者が通知を発出するという利益相反の状態を固定化させました。公益通報者保護法を踏まえた地方公共団体の通報対応に関するガイドライン（内部の職員等からの通報）は、組織の長その他幹部に関係する事案については独立性を確保する措置をとることを明確に求めています。体制の信頼性を回復するため、調査主体を申立対象者から切り離すことが不可欠であり、他の地方公共団体と連携及び協力して事務を行う仕組みを活用することや、組織の長その他幹部から独立した専門部署を設置することが強く求められます。

🗣️ 2. 意見所見の聴取義務化と活用促進

市は、調査結果に対する通報者の見解所見を利用することを拒否する姿勢を示しました。しかし、公益通報者保護法を踏まえた地方公共団体の通報対応に関するガイドライン（内部の職員等からの通報）は、通報対応に関して通報者等から意見又は苦情の申出を受けたときは、迅速かつ適切に対応するよう努めるべきとしています（ガイドライン第2（7））。調査の効率性と公正性を高めるため、結果通知に際して通報者の意見聴取を行い、その所見を再調査に活用するなど、適正手続の保障を制度的に義務化すべきです。

📋 3. 是正措置履行確認と公表義務化

通報No.13で指摘された、改善措置の履行状況確認がなされない「出しっ放し」構造は、制度全体の信頼性を損ないます。要綱第11条第2項が努力義務（「努める」）に留まっていたとしても、ガイドラインは、是正措置の実効性評価として、「是正措置等が当該地方公共団体において十分に機能していることを適切な時期に確認し、必要があると認めるときは、新たな是正措置その他の改善を行う」ことを定めています（ガイドライン第3（6））。制度の自浄作用を担保するため、履行確認を義務化し、運用実績の概要を定期的に公表する体制を確立すべきです（ガイドライン第5（4）①）。

🔍 4. 通報受付から通知までの全記録開示体制の確立

私は、病気休暇申請書の原本が「差戻しにより上書きされたため保存されていない」という公文書管理の不備（通報No.15）を指摘し、事実立証・申立て根拠の証明機会が奪われている状態にあると主張しています。これは、公文書管理法第4条（管理の基本原則）および糸満市文書取扱規程第3条が定める行政の説明責任に反する重大な欠陥です。

公益通報ガイドラインは、各通報事案への対応に係る記録及び関係資料について、適切な保存期間を定めた上で、秘密保持に留意して適切な方法で管理することを求めています（ガイドライン第5（1））。通報者が調査プロセスを検証し、権利保護を図るため、通報受付から通知までの全ての記録を、秘密保持に配慮した上で通報者に対して開示・提供できる体制を確立すべきです。

🧭 5. 総務部長等のリーダーシップによる制度横断的対応の推進

市は、ハラスメント、公益通報、情報公開、文書管理といった複数制度にまたがる問題に対して、「担当や所管部署がそれぞれ異なる」「権限がない」として包括的な対応の困難性を示しました。

しかし、地方自治体には、その担任する事務の管理及び執行が法令に適合し、かつ、適正に行われることを確保するための方針を定め、必要な体制を整備するよう努める義務があります（地方自治法第150条第2項）。総務部長等の幹部職員がリーダーシップを発揮し、部署間を横断的に調整し、制度の趣旨に基づく統一的な対応を推進することが不可欠です。

🧩 5-2. 市民・議会・報道への問いかけ

糸満市において、内部からの是正要求が利益相反や形式主義によって押しつぶされ、制度の自浄作用が著しく阻害されている現状を踏まえ、今後は市民社会全体による外部的働きかけが求められます。

🕵️‍♂️ 1. 住民監査請求の活用による行政監視

公益通報制度が公正に機能しない懸念が継続している今、市民の監査権を行使することが重要です。地方自治法第242条に基づき、住民は「違法または不当と疑われる公金の支出や行政運用」について、監査委員に調査と是正を求めることができます。

この制度は、市の財政の腐敗防止と行政の自浄作用の補完を目的としており、私が指摘するような公金管理や公平な市民対応に関わる疑義（例：埋設管漏水減免の業務滞留）に対する法的手段として活用されることが期待されます。

🧾 2. 議会を通じた制度是正の実現（請願）

議会は、行政の執行に対する監視機能を担っています。私は、市の制度運用不全と二次被害排除を目的とした**「制度改善および二次被害排除に関する請願」の提出を現在計画しており、地方自治法第124条に基づき、請願に必要な紹介議員の募集**を行っています。

請願は、日本国憲法第16条によって保障された国民の権利であり、議会を通じた行政是正を確約させるための直接的な手段です。

📡 3. 報道機関・外部機関との連携

私は、実質的な改善が見られない場合には、組合・議会・報道機関等、外部関係機関への情報提供および相談を検討せざるを得ないことを行政側に伝えています。

組織内で解決困難な問題に直面した際、労働組合や弁護士など外部機関に相談するのは、権利保護と主張の信頼性を高める正当な手段です。この外部連携の表明は、行政に法令遵守と誠実な対応を促す最後の手段として機能します。

🏛️ 公益通報制度の本質と信頼回復への道

公益通報制度は、「市民全体の利益を守るための声」法令遵守を推進するための重要な仕組みです。その声を利益相反や形式主義によって押しつぶすのではなく、制度の趣旨に基づき活かすことが、公務に対する住民の信頼回復と、真のガバナンスの確立につながります。

🔔 結語｜「警告音を止めるか、時計を修理するか」

制度の沈黙と公益性の喪失

糸満市で連続的に発生した公益通報制度の不備、ハラスメント対応の形骸化、および公文書管理上の欠陥は、まるで文字盤が美しくとも、内部の歯車が欠けている時計のようです。その機構上の異常を職員の声（通報）が検知し、組織に対して発したのが**「警告音」**です。

しかし、糸満市の対応は、その警告音が示す**制度の異常（利益相反、形式主義、説明責任の欠如）**を認めず、警告音そのものを押さえ込もうとすることに終始しました。

🚨 制度不履行の実態

利益相反の黙認:
パワハラ申立対象者名義で通知を発出するという、地方公共団体向け公益通報対応ガイドライン（令和4年6月1日消費者庁告示）第2‑(5)① に明白に違反する行為を行いました。この行為は、調査の公正性を自ら損なうものです。
形式主義による排除:
通報内容の実質的な公益性（安全配慮義務の欠如、公金運用の公平性など）を評価せず、「不正の意図がない」という主観的かつ狭隘な解釈をもって通報を不受理としました。
自浄作用の停止:
是正措置の履行確認の義務を曖昧にし、「出しっ放し」の構造を維持することで、制度の自浄作用が働く「出口」を塞ぎました。

これらの行動は、地方公共団体に課せられた公益通報者保護法第11条第2項（事業者としての体制整備義務）および同法第13条第2項（行政機関としての通報対応体制整備義務）に基づく「適切な対応のための体制の整備義務」の実質的な不履行を意味します。

🛠️ 求められるのは「時計の修理」という決断

糸満市が今なすべきは、警告音を消すことではなく、その音が示す制度の歯車を修理することに他なりません。

修理とは、職員の声に耳を傾け、法令の趣旨に立ち返り、組織の中立性と透明性を回復するための以下の抜本的な行動を意味します。

✅ 1. 独立した体制の確立

利益相反の懸念を認識しながら人事課主導体制を維持する方針を撤回し、ガイドラインの趣旨に基づき中立的かつ独立性を確保した調査体制を速やかに構築すること。

✅ 2. 公益性判断の回復

法第1条の目的に立ち返り、公金の不公平な運用や行政の説明責任の欠如といった、市民全体の利益に関わる構造的な問題を公益通報の対象として調査すること。

✅ 3. 市民社会との協働

内部の力だけで解決が困難な状況にある今、市民の監査権を行使する地方自治法第242条に基づく住民監査請求や、地方自治法第124条（請願権に関する規定）に基づく議会への請願といった、法が保障する外部からの正当な働きかけを受け入れ、協働することで制度を是正すること。

📢 公益通報とは、「市民の利益を守るための声」、法令遵守を推進するための重要な仕組みです。糸満市がこの現実に誠実に向き合い、制度の趣旨に立ち返り、壊れた歯車を修理するという勇気ある決断を下すことを強く求めます。

📄住民監査請求の呼びかけ ― 市民の力で行政を正す第一歩（記事No.3）

📎 X投稿（2025年11月1日付）：「糸満市議会への意識調…」

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